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ニュー・ワールド

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文學界』(2006.5)で、阿部和重が暴走気味に絶賛していた。相方の中原昌也はブレーキ役をつとめていたが、じつは彼もおなじ評価である(つまり絶賛)。
読み直したら首肯できることばかりで、付け加えるべきことはない。したがってこの一文は、阿部・中原評を紹介するだけである。


阿部「この映画はまず構成が異常だよね(後略)」
中原「もうひとつ異常なのは(中略)徹底して自然光のみで撮っていること(後略)」
阿部「この異常さの原因は(監督が)ポカホンタス役の女優に惚れ切ったからだとしか思えない(後略)」
中原「音楽はジェームズ・ホーナーとは思えないぐらい、すごくよくできてる。やってることは完全にフィリップ・グラスみたいなミニマルだもん(後略)」


注釈を入れると、その曲はワーグナーの楽劇『ニーベルングの指輪』序夜『ラインの黄金』である。ただし原曲もあんなにミニマルっぽくリフレインしたかどうかわからない。ワーグナーといえばヒトラーが愛好した作曲家で、古代ローマ的な、世紀末的な、誇大妄想的な…という連想が働く。イザベル・アジャーニとクラウス・キンスキーが出演した映画『ノスフェラトゥ』(1979)でも同じ曲が使われていた。…「新しい世界」、ニュー・ワールド接触する際の不安と期待をよく表現する、ある意味ヤバイ選曲であった。


中原「スクリーンにはコリン・ファレルとかが映ってるのに、そこでやられていることは完全にゴダールみたいなことというか(笑)」


禿げしく同意だが、ずっと楽しめる作りで、2時間16分飽きなかった。