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映画ガイド

映画覚書 Vol.1

映画覚書 Vol.1

阿部和重が『Cut』(99-01)、『文學界』(02-)に連載した映画論その他を収録した、難解な印象をあたえる本である。見ていない映画・知らない映画人が多すぎることを思い知らされる。シネフィルおそるべし。
連載時に読んで印象に残っていたのは、『マトリックス』(99)に関する記述である。

アメリカ映画において『マトリックス』が画期的だった真の理由は、本質的には描写の技術にではなく、物語構成にこそ認められる。本作は『M:I-2』以上に何でもありの映画だが、総ては仮想現実空間での出来事と設定されていることで、いかなる表現でも支障なく物語内に収めることが出来る。
(Cut,2000.8)

いま読むと、CGによって暴走を始めた映像表現の統御を放棄した『M:I-2』(00)より、統御に成功した『マトリックス』のほうが偉いって言っているだけということがわかる。だが当時は、『マトリックス』をそんなふうに評価した文はほかになく、新鮮な印象を受けた。


青山真治と阿部和重と中原昌也のシネコン!

青山真治と阿部和重と中原昌也のシネコン!

よく知らないけど有名な3人──青山真治カンヌ映画祭で受賞した映画監督、阿部和重芥川賞作家、中原昌也三島賞作家──、そういう若い才能が集まって、好きな映画について語りあっている本。楽しく読めたし、世界がひろがってよかった。これを読んだのがきっかけで、青山の『EUREKA』(00)を見て感心したし、3人そろって絶賛しているジョン・カーペンターの『ゴースト・オブ・マーズ』(01)を見て、あまりのバカ映画ぶりに頭をかかえた…。


映画でにぎりっ屁!

映画でにぎりっ屁!

榎本俊二『ゴールデンラッキー』は、週刊モーニングの連載をリアルタイムで読んだが、毎回どんな新しい技を繰り出してくるのか楽しみな、スリル満点の不条理ギャグマンガだった。担当編集者に路上で大便させたうえ、自爆させてしまったことがある。阿部和重とは日本映画学校の同窓生なんだそうだ(『ニッポニアニッポン (新潮文庫)』、斎藤環の解説による)。たしかにCGの洪水についての見方などそっくり。とりあげているのは大作映画ばかりだが、なかなか的確なコメントぶり、茶化しぶりが楽しめる。トム・クルーズを半ケツにしたり鼻毛を出させたり、ニコラス・ケイジ、ウィル・スミス、サミュエル・L・ジャクソンを3バカアホづらトリオと名付けて似顔絵を描いて笑わせたりもする。