板谷バカ三代
- 作者: ゲッツ板谷,西原理恵子
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2003/08/01
- メディア: 文庫
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これが、超面白いエッセイ集だった。疑って損をした。本当に前原さんのいうとおり、50回くらい笑った。寝る前に読むことはおすすめできない。睡眠時間が減るから。
著者のバカ家族が巻き起こす大事件・小事件が次から次へと紹介される。主人公は、著者の父親ケンちゃん。某自動車工場に勤めて定年までの42年間、無遅刻無欠勤を続け、有給さえ1日も使わなかったという超マジメな男。彼の欠点は、「他人に対してハンパじゃないお調子者」ということだ。家族に対しては寡黙なくせに、近所のバアさんの1人でも家に入ってくれば、「180度急変し、ラッパーのように喋りまくるのである。(中略)他人に対しての得体の知れないショーマンシップ、それはハンパじゃない」。
その血をひいた板谷氏のエッセイである。バカの血筋を強調するわりには、文章に知性を感じさせる。わたしは大槻ケンヂを思い出した。大槻をオタク─サブカルの代表とするなら、板谷はドキュンの代表だろう。しかし両者のエッセイは、けっこう似た印象をあたえる。
「男はつらいよ」に似た下町人情喜劇ともいえる。ただし著者が「バカだねぇ、寅は」と言うオイちゃんの役を演じようとするのだが果たせず、登場人物がことごとく寅のようなバカを演じてシュールな混沌の様相を呈するところが現代的と言えば言える。唯一、著者の妹だけがまともで、被害者の役割を一身に引き受けているのが痛々しい。