otkoygのブログ

Twitter : MT515

雲のむこう、約束の場所

BShiで放送するそうなので、ここらへんで見ておこうと思ってレンタル。
新海誠の名前を知ったのはけっこう前だ。2000年の第12回DoGA CGアニメコンテスト発表会でグランプリを獲得したのが、新海の「彼女と彼女の猫」だった。タイトルが庵野秀明監督の「彼氏彼女の事情」を連想させたし、映像センスも似ていたから、「器用なマネッコが現れたものだ」という批判的な印象をもった。
翌2001年、第13回DoGA CGアニメコンテストで、新海の次回作「ほしのこえ」の予告編が上映された。それを見て、かなり期待を抱かされた。正直、短い尺なのに感動してしまった。これは新海という作家の矜恃に打たれたからであるとともに、作曲家・天門の力が大きかった。いま見ても、本編より予告編のほうがよくできていたと思う。
翌2002年2月、本編が完成し、下北沢にある30座席くらいの小さな映画館で上映が始まった。さっそく足を運んだが、感想は芳しいものではなかった。ストーリーは結末に至らずに終わってしまう。結末を想像すれば、悲劇─絶望で終わるしかない。ヒロインのミカコは死体として主人公ノボルに発見される。それを描かず、といってエンターテインメントとして幸せな再会を描くという「あえてする陳腐さ」からも逃げている。中途半端なファンタジーだと思った。
わたしの感想はともかくとして「ほしのこえ」は大きな話題となり、商業的に大成功をおさめた。
新海は謙虚な人柄であり、2004年の第16回DoGA CGアニメコンテスト会場でスタッフとしてまめまめしく働いている姿を目撃し、好感を持った。


ここから今作の感想にはいるが、ストーリーはとくに感心するところがなかった。グラフィックは美しい。その点だけは保証できる。「千と千尋の神隠し」の水上を走る列車のシーンを思わせる、冥界のような風景が続く。ただしくっきりしたデジタル画像で、ダウナー系のわたしにはやや眩しかった。次回作を早く見たいと思わせたから、つなぎの作品としては合格点だろう。男同士の友情を描くという試みはあまりうまくいっていない。石塚運昇が声を演じる工場の親父はよかった。